Top Page

あんなぷるな道中膝栗毛

9. 年越し(チョムロン) <目次に戻る

 温泉で疲れを癒した翌日、我々3人はチョムロンへと向かった。
チョムロンへは一気の急登である。

 歩き出して少しすると鼻にキズのある年取った犬が、
私達の後ろをついてくる。
別にエサをあげた訳でもないのに、我々が気にいったのか、
私のそばから離れない。
途中、牛に追われたり、年で登りがきついのか、道端でゲロを
はき乍も、必死でついてくるのである。

 途中一軒のバッティ(茶屋)で、一息入れる事にした。
大分高度を稼いでいる様で谷底から連なる対面の棚田が美しい。
美味しいチヤを頂いて出発した。
相変わらずの急登が続くのだが我々と同様、苦労して登ってくる
老犬を見ていると、随分と心が和まされた。

 やっとの思いで稜線に出ると、一気に視界が開け、目の前に、
ヒウンチュリ、アンナプルナサウスが、“ドカン”と見える。
日本の上高地に、山容が似ているのだが、あの穂高連峰を縦に
3倍位にした感じである。
稜線からは又どんどん下って行くのだが、その道沿いに沢山の
ゲストハウスが、並んでいる。

 チョムロンはこの付近ではガンドルンに次ぐ大きな集落なのだ。
ここでは現在、沢山の電信柱が立ち、もう少しで、電灯が灯る
のだそうだ。
もう随分前になるが、日本人で信州諏訪のタクシー運転手で林さん
(私と山本氏も以前に一度彼の家を訪ねたことがあるのだが)
と言う方が、自費でこの村に、水力発電の灯を、灯したのだ。
きっと、そういう働きが元となり、現在集落全体に、電灯が
灯る事に成りつつある様だ。

 中野氏の知り合いのゲストハウスには、午後早くに到着した。
鼻にキズのある老犬は、我々が無事宿についたのを見届けると
いつの間にか、いなくなった。
この先にも宿は沢山あると言うが、ここから先の最終目的地
アンナプルナベースキャンプ迄は、
視界があまり開けないと言う、素晴らしい景色に敬意を表して、
今日はここに泊まる事にした。

 夕刻のゲストハウスでは、客が我々だけという事もあり、宿の
子供達が我々の回りに、集まって来た。
今日ここへ来る途中、電灯工事の為落ちていたかは、分からないが、
クシャクシャになった1m程の針金を、
何かに使えるかと拾っておいたのだ。
それを一杯(ロキシ)やり乍ら、山本氏のラジオペンチ付きの
ナイフというのを借りて、延ばしたり曲げたりして見る。
子供達は全員、何が出来るのか?テーブルにしがみついて見ている。

 やがて知恵の輪が一つ出来上がった。

 私が皆に何度かやって見せると、やっと理解したのか、それから
皆取り合いの様にやっている。
堅い針金が、瞬時に継がったり、外れたりするのが、とても
不思議の様だ。
しまいには、宿の女主人迄出て来て、子供達から取り上げて
やっていた。


 その日はもう一つ、時計を見ながら8時45分を待っていた。

 今日は12月31日ネパールと日本の時差を考えると、日本では
この時間2000年を迎える筈である。

 我々はささやか乍ら日本風に正月を迎え様と思っていたのである。
ザックからは、大雪渓(これは私達の住んでいる信州の地酒)や、
つまみ、餅等が出された。
酒好きの中野氏も日本酒が一升出て来て驚いている。
餅を焼き、海苔を巻き、雑煮のつもりでスープを飲み、
ささやか乍ら日本風年越しで、
この夜は更けていった。

 子供達も知恵の輪が気に入ったらしく、夜遅く迄遊んでいた。 
たった一本の針金で、こんなに喜んでもらえるのは、逆に
こちらがありがたい気分にさせられた。

 最高の年越しに感謝!

              合掌

目次に戻る

Top Page






























<EOF>