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あんなぷるな道中膝栗毛

17. タトパニの赤い花 <目次に戻る

 翌朝は、山本氏が少し体調を崩している。
風邪をひいた様だ。
今日は一日、静養すると言うので、私は河原へ朝風呂へ入りに行った。
温泉は今日も盛況である。
トレッキング途中に温泉に浸れる事は殆ど無い。
皆堪能している様だ。

 ゴレパニで同宿だった日本人に会ったりして話が盛り上がる。
彼は和歌山出身でイギリスに留学していたそうだ。
今回無事卒業して、帰国の途中らしい。
ゴレパニでは、美しいカナダ人のガールフレンドと一緒だったが、
今はいない。

 男性は下着で平気だが、女性はやはり恥ずかしい様だ。
 女性陣のヒマラヤトレッキングには、水着が必需品の様である。

 その後宿へ戻ってみたが、山本氏はまだ調子悪そうなので、
今日は一日ゆっくり休んで貰い、私は一人隣の集落“ラトパニ”へ
出掛ける事にした。
ラトパニは、昨日通過したチェックポストの先にある。
昨日通ったコースであるが、今日は空身、昼間の生活を見ながら
ブラブラと歩く。

 この時期ネパールは乾期の為晴天が多い、加えて昨日1700m近く
標高を下げた為、ポカポカと暖かいのだ。
一時間程で、ラトパニの集落に着いた。
道の上から河原を見下ろすと、河原に掘っただけの湯船が見える。
実はこちらも温泉なのだ。

 タトパニは現在有名の様で、いつも盛況だがこちらは鄙びた感じで
すいている。
河原に降りて行くと、一人だけ入っている客は日本人だった。
少し離れた所に、もう一つ湯船が掘ってあり、そちらは地元の家族
らしき人が、入っている。
旅行者は、我々だけだった。
そのうち地元のオバさんが二人入って来た。
大分年配で、胸がはだけてもあまり気にしない。
私達も日本の露天風呂の気分で、全然気にならないのだが、
河原から湯が直接湧いているので、気を附けないと、お尻を
火傷しそうだ。

 しかし、静かな温泉で最高だった。

 知り合った日本人は今日はここに泊まると言う。
風呂上がり、すぐ上にあるゲストハウスの、彼の部屋を
見せて貰った。
二年前も同じ部屋に泊まったそうだ。
河原からせり上がる崖の上に立っている為眺めが、抜群に
良いのだが、今回はその窓の真前に、電柱が立っている。
ヒマラヤにも文明の波が、押し寄せて来ている様である。

 折角なので彼と昼食を共にした。
彼はジョムソムからここ迄を、三ヶ月かけて歩いていると言う。

普通に歩けば、三日で着くコースである。
全ての脇道を、歩いている様だ。

 「最高の旅をしているネ!」

と、私が言うと、昨夜の行動を見られていたのか?

 「僕が酒を飲めたら、あなたの様な旅をしたいですヨ !」

と、逆に言われてしまった。
何処で誰に見られているか、解らないというのは恐いものです。

 恐れいりました!

 彼にはこれから我々が歩くコースのアドバイスを、幾つも教えて
貰った。
話しはいつ迄も、尽きないのだが、彼に別れを告げ、タトパニへ
戻る事にした。

山本氏に

 「良ければ、泊まって来たら!」

と言われ、私も半分その気でいたのだが、ここのビールの味が
少し変だった。
ネパールでは、全て客に見える様に、店先にビール、ジュース、
ミネラルウォーター等を並べるのである。
その為陽の当る店では、味が変わっていたりする。
注文の多い店だと品物が入れ替わるが、気を附けないと、
ミネラルウォーターが、腐っている事もあると言う。

 帰りは、タオルをぶら下げて、のんびりと散歩した。
タトパニの商店で、あまり見かけない地酒を見つけたので、
山本氏に買って帰る。
山本氏も大分快復していて、夜はバンガロー風の部屋で、
一緒に飲んだ。

赤い花_タトパニ

 タトパニは、カリガンダキ、ナディ(河)が流れる谷底にある村
である。両側に断崖が、そそり立っている。
小さな空に、満点の星が輝き、上流には“ニルギリ南峰”の白い峰が、
静かに聳えている。

 そしてこの時期、真赤な花が到る所で、咲き乱れているのである。
ラル(赤)パテ(葉)“ラルパテ”と呼ばれるこの赤い花に囲まれて、
タトパニの夜は静かに、更けていった。

 我々は、洗濯と山本氏の大事を取って、翌日もここに滞在した。


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