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あんなぷるな道中膝栗毛

22. 換金屋の娘 <目次に戻る

 歩くのが基本の、トレッキングにおいて、ジョムソムと言う土地は、
幾らか違う雰囲気の土地である。
それはこの地に、飛行場があるからだと思う。

 飛行場と言っても、唯整地しただけの平らな土地なのだが、
これは広河原と呼ばれる土地のおかげでもある。
広河原は通常、石がゴロゴロと言うスタイルなのだが、
これだけ広い広河原だと、石を避けて整地をすれば、飛行場として
使える様だ。(大変な労力は要したと思うが)
トラクターも2台程見かけ、その為かジョムソムの町は車道に
なっていて、道幅がやたらと広かった。
その道の両側には、アメリカの西部劇に出て来る様な店やホテルが
立ち並ぶ。

 朝10時を過ぎると、猛烈に吹きつけるインド風、そういった
土埃の中を、颯爽と馬に跨り、テンガロンハットを被って来る人が、
女性だったりする。
幅広い道と、西部劇風の看板が、西部劇の1シーンに登場した気分に、
させてくれる。
又両岸に連なる丘陵や山肌は、黄褐色に変わり、荒涼とした雰囲気は、
チベットが近い事を感じさせる。

 百年前、河口彗海氏が歩いたコースでもあると言う。

 この地が、国境に近いと言う事もあってか、ジョムソムの街には、
軍の基地も存在する。
当然チェックポストもあり、チェックポストのある所は、
両替所も存在する。
私は資金のルピーも殆ど無く、両替の為そこを、訪れた。

 ここは、ネパールの特別自治区“ムスタン王国”の入り口でもあり、
チベット系の人も多く、この両替所の娘も、チベット系の美人だった。
まだ、十代と思える彼女は、とても愛想が良く、砂埃が舞う町に咲く、
一輪の可憐な花の様である。(キザでも良いのだ!)

 彼女は愛想良く書類を渡してくれ、その書類に色々と書き込むのだが、
英語に不慣れな私に、同行の山本が親切に、ここには名前、ここは
金額等と教えてくれる。
書き込んだ書類を、彼女に渡したのだが、暫くの間書類を見ていた後、
私に合図し説明してくれた。
これはこっち、これはこちらと、全ての箇所にボールペンで矢印が、
つけられた。

 書く場所が全て、違うのだ。

私はいちいち頷き乍ら小さくなり、小学校低学年の頃を、思い出した。
女の先生に、

 「違うでしょ!ここはこう書くのヨ!」
 「分かったー!」
 「えらいわヨー」

と言った光景が甦って来た。
後ろを振り向くと、山本がニヤニヤしている。
笑いをカミ殺しているのだ。

 考えて見ればこの男、修行僧迄騙した男である。

 私にウソを教える事等、朝飯前なのだ。

 この後、この先の村にある居酒屋に足繁く通う事になるのだが、
この両替所の前を通る度に、何くわぬ顔で山本は彼女に手を振り、
私はと言えば、目を伏し目がちにし、そこを足早に通り過ぎた
のだった。

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