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あんなぷるな道中膝栗毛

24. 木端微塵のアンモナイト <目次に戻る

 ムクチナートを訪ねた後、ジョムソムへ戻る途中、行きにも
泊まったエレクバッティにステイする事にした。
昼についたので、ジョムソム迄行く事も出来るのだが、
向い風の強いこともあって、午後は二人共、宿の前の河原で、
アンモナイトを探す事にした。

 インド風の中で三時間程も探したろうか?
山本氏は三つ程、それらしき石を見つけていた。
宿の女主人に見せると、全部の石に化石が入っていると言う。
私も一つだけ見つけていた。
女主人に見せると、

 「ビック1!ビック1!」

と騒いでいる。

 「売ってくれ」

と頼まれたが、自分で探した記念なので、丁重に断った。
夕刻息子が帰ったら、割ってくれると言う。
その後二階のテラスで、お茶を飲んでいると、15〜6才の
カンチャ(使用人)の女の子が、そばに来た。
二回目のステイなので、少し慣れた様だ。

 彼女は我々の横で、切れたサンダルの鼻緒を修理してる。
日本では鼻緒の切れたサンダルは、捨てるのがあたり前に
なっているが、物の無いここでは、若い娘が一生懸命歯で針を
引っ張り、縫い直しているのだ。
こういう直向きな行動に、我々はとても弱い。
山本氏は、

 「次来る時は、彼女にサンダルを買って来たい!」

と言っていた。

 夕刻、宿の息子が帰って来て、アンモナイトを割る事になった。
やり方は簡単、ストーブの中で石を焼いた後、一度半分程水に
浸ける。
後はハンマーで割るだけである。

 山本氏の見付けた石は、皆見事に化石が入っていた。
最後に私の見付けた石も割る事になった。
大きかったので、中に三つのアンモナイトが入っていた。
しかし大き過ぎて水に十分触れない為か、バラバラになって
しまった。
やればやる程バラバラになるので、息子に辞めてもらい、
部屋に持ち帰った。

 何だか、やっと見つけた宝物が、バラバラになって、
 やるせない気持ちになった。

 夕食の時、美しいカンチャが食事を運んでくれるのだが、
最後に同じものが二つ出て来た。
二つは頼んでないので、

 「一つしか注文して無いヨ!」

と告げると、凄く悲しい顔をして、下げて行った。
今思うと、何故あの時、食べてあげなかったのだろうと思う。
彼女は使用人なので、注文ミスはこっぴどく叱られるのだと思う。

 翌日我々は旅立ったのだが、彼女が私の前に姿を表すことは、
 二度と無かった。

 知らぬ間に、人を傷つけるという事は、とても悲しい事である。


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